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鉄の溶解炉には、おもにキュポラと低周波誘導電気炉が用いられています。原料は銑鉄と鋼屑を使用しますが、銑鉄だけを使用しますとC%の含有量が高く、少なくとも4%含まれています。Si量も鋳物用として相当量含まれたものが供給されています。これを低めるために、低C%である鋼屑を配合して溶解します。銑鉄は鉄鉱石(磁鉄鉱、赤鉄鉱)を溶鉱炉(高炉)で、鉄鉱石、コークス、石灰石などを交互に入れ、一方炉の下から高温の空気を吹き込みますと、コークスが燃えて、炉の底では2000℃になります。これが高温の一酸化炭素あるいはコークスの炭素によって酸素を取り去られ(還元といいます)、溶鉱炉の底にたまります。これを“溶銑”といいます。溶けた“銑鉄”です。この工程が“製銑”です。この銑鉄には製鋼用銑と鋳物用銑(“なまこ”あるいはpig ironといわれる。一片が5~15kgほど)とがあります。この銑鉄と鋼屑を配合した状態で溶かし、鋳型に流し込んだものが“鋳鉄”です。鋳鉄がcast iron、鋳鉄品がiron castingといわれています。
鋳鉄の性質
鋳鉄の性質は“硬くて、もろい”というのが常識です。しかし鋳鉄が硬いというのは、鋳鉄に析出した黒鉛が潤滑の働きをし、摩耗に対して強いという事から、 摩耗しない、硬い、と言われています。
硬さはHrC30以下であります。また“もろい”という事は析出した黒鉛が金属 ではないので、フェライトがそこで切れるため、“もろい”のです。たたいたら、 割れる、折れる、欠ける、などの欠点にもなっています。
鋼材とはまったく違った性質が、もう一つあります。
たたいた時ですが、振動を吸収してしまうのです(吸振性)。例えば、FCで出来た定盤の上に、なにかの 部品を置きますと、コトンとか、コツンといった短い音がするだけです。振動を嫌う工作機械や測定器などの本体には、もってこいの性質になります。そのうえ潤滑性が良く、しかも一度に複雑な形に成形出来るのですから、申し分ないのです。又鋳鉄の性質は黒鉛の形状により変わってきます。黒鉛を球状にすることによって“もろさ”を改善できます。
また、鋳鉄の製造方法も相当進んでおり、最近では鉄鋼の生産方法と同様に連 続鋳造方法が取られています。これにより設備合理化、労務費率の減となり、更 には作業環境が砂型鋳造と比較して非常に良いため、製造原価のコスト減になっ ております。
この製造方法で丸棒、角鋼、平鋼などが大量に生産されています。次回は、ねずみ鋳鉄(FC)、球状黒鉛鋳鉄(FCD)、可鍛鋳鉄(FCM)といった各鋳鉄の質、特長などを説明します。