鋳物知識(2)

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前回は鋳鉄(鋳物)について説明しましたが、鋳鉄は硬くて脆いというのが常識です。しかし鋳鉄が硬いというのは、鋳鉄に析出した黒鉛が潤滑の働きをし、摩耗に対して強い性質も合わせて持っています。

1.ねずみ鋳鉄とは(FC)

鉄と炭素の合金の炭素がセメンタイトの形よりも黒鉛の形で多く存在し、その破損は灰色でありそんな処よりねずみ鋳鉄と名前が付いたのでしょう。ねずみ鋳鉄のJIS記号ではFCです。Fはフェライト (ferrite)のFです。CはcastingのCです。此のあとに2桁の数字が付きます、例えばFC20という場合はこの2桁の数字は引張り強さの最低値です。炭素は鋼のときにはセメンタイトと言う金属間化合物になっているのですが、鋳鉄品のときには多くなって1部がセメンタイトになっているだけで、大部分の炭素は黒鉛という形になってでるのです。この現象を(析出)といいます。

2.球状黒鉛鋳鉄(FCD、ダクタイル)

ねずみ鋳鉄の黒鉛が片状であるのに対して、これはその名のとおり球状になっているのです。球状黒鉛鋳鉄は普通ダクタイル(ductile)と呼ばれています。ダクタイルというのは「伸ばしやすい、しなやかな」という意味です。記号のFCDはductileのDからとってあります。このあと2桁の数字が引張り強さを表す事は、JISのSS、FC等と同じ事です。黒鉛が球状になりますと、ねずみ鋳鉄の片状黒鉛が脆い原因であったのに対して、こちらでは素地のフェライトやパーライトの性質がそのまま出て来る様になるのです。つまり、折れにくく、鋼材の様に伸びるという事です。引張り試験の試験片も鋼材と同じものになります。1-3種のFCD40-50は素地がフェライト系であり、FCD60-70はパーライトでこちらは熱処理もできます。

3.可鍛鋳鉄(FCM、マリアブル)

鋳鉄は叩けば割れるものというのが常識ですが、それが、叩いてもかまわない(可鍛)鋳鉄だというわけです。Malleableを可鍛と訳したのです。叩いても、すぐ折れたり、割れたりしないという程度だと理解してください。可鍛鋳鉄には2種類あります。黒心可鍛鋳鉄と白心可鍛鋳鉄です。JISではblackheart(黒心)のB、whiteheart(白心)規格はFCMB、FCMWという記号になります。引張り強さについては白心の方が大きい、白心可鍛鋳鉄は表面は脱炭されてフェライトになっていますから、ここは軟鋼なみになりますが、内部はパーライト地ですから硬いままです。黒心可鍛鋳鉄は炭素を全部黒鉛にしてしまって、地をフェライトにして伸びを良くしたものです。なお規格の最後に2桁の数字があるのは引張り強度を表しています。

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